戦略は、あるだけでは機能しない。判断と行動につながって初めて意味を持つ。
「戦略はつくった。しかし、なかなか実行されない」
事業をしていると、そんなことがあります。
目指す方向も決めた。
顧客も考えた。
提供する価値も整理した。
やるべきことも話し合った。
それなのに、しばらくすると、
以前と同じような判断をしている。
施策がバラバラに動いている。
何を優先すべきなのか迷っている。
そんな状態に戻ってしまう。
なぜでしょうか?
私はこれまで、さまざまな事業やプロジェクトに関わる中で、
戦略が「ない」ことだけが問題なのではなく、
戦略が「あるのに機能していない」ことも大きな問題
だと感じてきました。
戦略は、つくっただけでは意味を持ちません。
日々の判断や行動につながって初めて、戦略として機能します。
では、なぜ戦略は実行されなくなるのでしょうか?
「戦略がある」と「戦略が機能している」は違う
会社や事業には、
ビジョン
事業方針
戦略
年度計画
といったものが存在することがあります。
しかし、文書として存在していることと、実際に機能していることは同じではありません。
たとえば、
「顧客第一」
「高い付加価値を提供する」
「差別化を図る」
「持続的な成長を目指す」
といった言葉があります。
どれも間違っているわけではありません。
しかし、その言葉をもとに、
実際の仕事で何を選ぶべきかまで判断できるでしょうか。
新しい顧客から相談が来たとき。
新しいサービスを考えるとき。
価格を決めるとき。
ホームページで何を伝えるか迷ったとき。
戦略を見れば、
「自分たちはこちらを選ぶ」
と判断できる状態になっているでしょうか。
もし判断できないのであれば、
戦略は存在していても、まだ十分には機能していないのかもしれません。
ビジョンが抽象的なままになっている
戦略が実行されない原因の一つは、
その前提となるビジョンが曖昧なことです。
たとえば、
「社会に貢献する会社になる」
「お客様に愛される事業をつくる」
「より良い未来を実現する」
というビジョンがあったとします。
方向性としては大切です。
しかし、それだけでは、
具体的にどこを目指しているのか
まではわかりません。
どんな顧客に、
どんな価値を提供し、
どのような存在になりたいのか。
そこまで具体化されていなければ、人によって解釈が変わります。
Aさんは「顧客数を増やすこと」と考える。
Bさんは「サービス品質を高めること」と考える。
Cさんは「新しい事業を始めること」と考える。
同じビジョンを見ているつもりでも、実際には違う方向を向いてしまいます。
ビジョンは、掲げるだけではなく、意思決定につながるところまで具体化する必要があります。
戦略そのものが曖昧になっている
ビジョンだけでなく、戦略そのものが抽象的な場合もあります。
たとえば、
「顧客満足度を高める」
「差別化を強化する」
「ブランド力を高める」
「デジタルを活用する」
といった言葉です。
これらも、方針としては間違っていません。
しかし、
誰に対して、
どんな価値で、
何を強みに、
どこで選ばれるのか
が明確でなければ、具体的な選択にはつながりません。
戦略とは、
単に「何をやるか」を決めることではありません。
何を選び、何を選ばないかを明確にすること
でもあります。
「顧客を大切にする」ではなく、
どの顧客を、特に大切にするのか。
「価値を高める」ではなく、
どんな価値で選ばれるのか。
「強みを生かす」ではなく、
どの強みを、どの顧客の、どんな課題に生かすのか。
ここまで具体化されて初めて、戦略は判断に使えるようになります。
戦略とは何かについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。
戦略が複雑すぎる
戦略が実行されないもう一つの理由は、
複雑すぎることです。
戦略をしっかり考えようとすると、
市場分析
顧客分析
競合分析
自社分析
SWOT分析
KSF
KPI
施策…
と、さまざまな要素が増えていきます。
分析すること自体は重要です。
しかし、その結果として、
何十ページもの資料ができ、
多くの重点項目が並び、
結局、
「一番大切なのは何なのか」がわからなくなってしまうことがあります。
戦略を考えた人には理解できても、実行する人には伝わらない。
あるいは、小さな事業であれば、戦略を考えた本人でさえ、日々の仕事に追われるうちに何を重視すべきだったのかわからなくなる。
これでは、戦略は機能しません。
私は、
戦略は深く考えるべきですが、最後はできるだけシンプルでシャープにする必要がある
と考えています。
複雑なことを、そのまま複雑に伝えるのではなく、
考え抜いた結果として、
「結局、自分たちは何を大切にするのか」がわかる状態にする。
それが重要です。
戦略が日々の判断に落ちていない
戦略が実行されるためには、戦略と日々の仕事がつながっている必要があります。
たとえば、
「特定の顧客に、専門性の高いサービスを提供する」という戦略を決めたとします。
そうであれば、
どんな依頼を受けるのか。
どんなサービスをつくるのか。
どんな価格にするのか。
何をホームページで強く伝えるのか。
どんな記事を書くのか。
という日々の判断にも、その戦略が反映されるはずです。
ところが、
戦略を決めた後も、
以前と同じ基準で仕事を受け、
以前と同じようにサービスを増やし、
以前と同じメッセージを発信していたら、
戦略は実際の事業を何も変えていません。
戦略とは、頭の中や資料の中に置いておくものではありません。
日々の判断基準へ変換されて初めて実行されます。
行動計画をつくれば、戦略が実行されるわけではない
戦略を実行するというと、
「では、具体的なアクションプランをつくろう」という話になりがちです。
もちろん、行動計画は必要です。
しかし、
戦略そのものが曖昧なまま、行動だけを具体化しても、本質的な問題は解決しません。
SNSを週3回更新する。
月に4本ブログを書く。
広告を出す。
営業件数を増やす。
こうした目標を決めれば、活動量は増えるかもしれません。
しかし、
その活動が何のためなのか
が明確でなければ、忙しくなるだけです。
重要なのは、
ビジョン
戦略
判断
施策
行動
が一貫してつながっていることです。
行動を増やす前に、
その行動が、自分たちが選んだ戦略に本当につながっているのかを確認する必要があります。
戦略を実行可能にするために必要な4つのこと
では、戦略を実行につなげるためには、何が必要なのでしょうか。
私は、大きく4つあると考えています。
1.ビジョンを具体化する
「どんな事業にしたいのか」を、誰が見ても同じ方向をイメージできるところまで具体化します。
抽象的な理想だけでは意味がありません。
2.戦略上の選択を明確にする
- 誰に価値を届けるのか
- どんな価値で選ばれるのか
- どの強みを生かすのか
- 何に集中するのか
- 何をやらないのか
を明確にします。
戦略とは、
選ぶことと同時に、選ばないことを明確にすることでもあります。
3.シンプルな言葉にする
戦略を説明するために、毎回長い資料を読み返さなければならない状態では、実行しにくくなります。
考える過程は複雑でも構いません。
しかし最後は、
自分たちがどこを目指し、誰に、どんな価値で選ばれるのか
をシンプルに説明できる状態にします。
深く考えた結果を、わかりやすく研ぎ澄ます。
それが重要です。
4.日々の判断基準に変える
戦略を「いい言葉」で終わらせないことです。
新しい仕事を受けるか、
サービスを増やすか、
どんな顧客を優先するか、
何をホームページに載せるか、
どんな発信をするか。
という日々の判断に使える状態にします。
戦略によって、実際の判断が変わる。
そこまでできて初めて、戦略が実行されていると言えます。
深く考え、シンプルにする
私はこれまで、ビジョンや戦略が存在しているにもかかわらず、それが十分に行動につながらない状況を見てきました。
その中で強く感じているのは、
戦略は、複雑だから優れているのではないということです。
顧客を深く理解する。
市場を見る。
競合を見る。
自分たちの強みを考える。
さまざまな可能性を検討する。
考える過程では、十分に深く考える必要があります。
しかし、その結果としてできあがる戦略は、
できる限りシンプルで、シャープで、迷わないものにする。
誰に。
どんな価値で。
何を強みに。
どこで選ばれるのか。
何をやり、何をやらないのか。
それが明確であれば、日々の判断はずっとしやすくなります。
複雑な戦略を覚えて実行するのではありません。
シンプルな軸によって、多くの判断を一貫させる。
それが、実行できる戦略だと私は考えています。
戦略が機能しているかを確認する5つの問い
自分の事業の戦略について、次の問いを考えてみてください。
1.目指す方向を、自分の言葉で説明できるか
抽象的な言葉ではなく、
どんな事業を目指しているのかを具体的に説明できるでしょうか。
2.最も大切な顧客が明確か
誰にでも、ではなく、
誰を優先するのかが決まっているでしょうか。
3.何で選ばれるのかを説明できるか
「品質」「丁寧」「経験」といった言葉だけではなく、
顧客にとって、なぜ自分を選ぶ意味があるのかを説明できるでしょうか。
4.何をやらないかが明確か
何でも受け入れるのではなく、
自分たちが選んだ戦略に合わないものを、意図的に選ばない基準があるでしょうか。
5.戦略によって、実際の判断が変わっているか
これが最も重要です。
戦略をつくる前と後で、
仕事の受け方・サービス・価格・発信・ホームページ・時間の使い方が、何も変わっていないのであれば、戦略はまだ十分に機能していないかもしれません。
戦略は、「わかる」から「使える」へ
戦略は、理解するためだけにあるものではありません。
まして、資料をつくることが目的でもありません。
戦略の価値は、実際の判断を変えることにあります。
どこを目指すのか。
誰に価値を届けるのか。
どんな価値で選ばれるのか。
何に集中するのか。
何をやらないのか。
これらが明確になり、迷ったときに、
「自分たちの戦略なら、こちらを選ぶ」と言える。
その状態まで戦略を具体化することが必要です。
戦略は、あるだけでは機能しない。
判断と行動につながって初めて、戦略になる。
私は、そう考えています。
本質を明らかにし、実行できる戦略へ
Strategic Business Designでは、戦略だけを切り離して考えません。
まず、
- 顧客
- 提供価値
- 強み
- ビジョン
を整理し、事業の本質を明らかにします。
その本質をもとに、
- 誰を最優先にし
- どんな価値で選ばれ
- 何に集中し
- 何をやらないのか
を戦略として設計します。
そして、その戦略を、
- 日々の判断
- サービス
- メッセージ
- ホームページ
へとつなげていきます。
事業の本質を、戦略へ
戦略をホームページへ
それが
Strategic Business Designです。

