ターゲットを絞ることは、顧客を切り捨てることではありません。
事業について考えるとき、「ターゲットを絞った方がいい」と言われることがあります。
しかし、実際に考え始めると、「絞りすぎると、お客様が減ってしまうのではないか」 「せっかく来てくれる人を断ることになるのではないか」 「できるだけ幅広い人に知ってもらった方がいいのではないか」という不安が出てきます。
特に、個人事業主や小規模事業では、顧客を限定することに抵抗を感じる方も多いと思います。その気持ちはよくわかります。
しかし私は、
小さな事業だからこそ、「誰に届けるのか」を明確にすることが重要だと考えています。
なぜなら、
ターゲットを明確にする目的は、顧客を減らすことではなく、自分の価値が最も必要とされる相手を明確にすることだからです。
「誰でも歓迎」は、一見よさそうに見える
できるだけ多くの人を顧客にしたい。事業をしていれば、自然な考えです。
たとえば、
- 「年齢を問わず対応します」
- 「個人から法人まで幅広く対応します」
- 「さまざまなお悩みに対応できます」
という表現があります。間口が広く、安心感もあるように見えます。
しかし、顧客の立場から見ると、
「自分のためのサービスなのか」がわかりにくくなることがあります。
たとえば、「幅広い事業者の経営を支援します」と言われるより、
「事業の強みや価値をうまく言語化できず、ホームページで何を伝えればいいか迷っている小規模事業者を支援します」と言われた方が、該当する人には、
「自分のことだ」と感じてもらいやすくなります。
誰にでも当てはまる言葉は、結果として、誰にも強く届かない言葉になってしまうことがあります。
ターゲットを絞るとは、「売らない人を決める」ことではない
ここは、とても重要です。
ターゲットを絞るというと、「その人以外には売ってはいけない」と考えてしまうことがあります。
しかし、必ずしもそうではありません。
ターゲットを明確にするというのは、
まず、誰を最も大切な顧客として考えるのかを決めることです。
たとえば、「個人事業主・小規模事業者」を中心顧客として考えたからといって、それ以外の企業から相談があれば断らなければならない、ということではありません。
重要なのは、
サービスを設計するとき、
メッセージを考えるとき、
ホームページをつくるとき、
誰を思い浮かべて考えるのかを明確にすることです。
つまり、
ターゲットとは“排除する範囲”ではなく、“優先する相手”だと考えるとわかりやすいと思います。
年齢や職業だけでは、ターゲットを絞ったことにはならない
では、「40代女性」「経営者」「個人事業主」と決めれば十分なのでしょうか。
私は、それだけではまだ足りないと思っています。
なぜなら、
同じ属性でも、抱えている問題はまったく違うからです。
たとえば、同じ個人事業主でも、
- これから事業を始めようとしている人
- すでに顧客はいるが、事業の方向性に迷っている人
- ホームページを作ったが成果が出ていない人
- サービスは良いと思っているが、強みをうまく言葉にできない人
では、必要としている支援は違います。
だからこそ、
「誰に」を考えるときには、年齢や職業といった属性だけではなく、
その人が、今どんな状況にいるのか
まで考える必要があります。
「誰に」よりも、「どんな悩みを抱えている誰に」まで考える
顧客を考えるとき、
「誰に」+「どんな状況にいるのか」+「何に困っているのか」まで考えることが大切です。
たとえば、「小規模事業者」だけではなく、
「事業への想いはあるが、強みや提供価値をうまく言語化できず、ホームページで何を伝えればよいか迷っている小規模事業者」まで考えてみる。
すると、その人に必要なことが見えやすくなります。
- どんな言葉を使うのか
- どんなサービスを提供するのか
- どんな順番で説明するのか
- どんな悩みに答えるのか
「誰に」が具体的になるほど、「何を提供するか」も具体的になっていきます。
顧客を明確にすると、提供価値も明確になる
ターゲットを明確にする最大の意味は、単に広告や集客をしやすくすることではありません。
提供価値そのものを明確にできることです。
顧客が違えば、価値も変わります。
たとえば、同じホームページ制作でも、開業したばかりの人が求めるものと、10年間事業を続けてきたものの、現在のホームページと事業の方向性が合わなくなっている人が求めるものは違います。
前者なら、「まず事業を知ってもらうこと」が重要かもしれません。後者なら、「今の事業の価値を整理し直し、現在の方向性に合ったホームページへ再設計すること」の方が重要かもしれません。
このように、誰に届けるかを決めることで、初めて、その人にとって何が価値なのかを深く考えられるようになります。
「誰にでも届く言葉」より、「自分に向けられた言葉」
ホームページや広告では、できるだけ多くの人に当てはまる文章を書きたくなることがあります。
しかし、顧客が反応するのは、情報量の多い文章ではありません。
「これは自分のことを言っている」と感じる言葉です。
たとえば、「事業のお悩みを解決します」という言葉より、「自分の事業の強みや価値を、うまく言葉にできない」という言葉の方が、その悩みを持っている人には強く届きます。
対象は狭く見えるかもしれません。
しかし、その人から見れば、自分への関連性は一気に高まります。
事業では、広く浅く伝えることよりも、必要としている人に深く届くことが重要な場合があります。特に、広告費や人員に限りのある小さな事業では、その傾向はさらに強くなります。
小さな事業ほど、「広さ」ではなく「深さ」で選ばれる
大企業であれば、多くの商品を持ち、多くの顧客に対して、大量の広告を使って認知を広げることもできます。
一方、小さな事業では、同じ戦い方をする必要はありません。
むしろ、
特定の顧客を深く理解し、その人にとって意味のある価値を提供することの方が、大きな強みになります。
「あらゆる人に対応できます」ではなく、
「このような悩みを持つ人なら、自分は深く支援できる」という状態をつくる。
その方が、顧客にとっても、「ここなら自分のことを理解してくれそうだ」と思いやすくなります。
小さな事業の強さは、大きさではありません。
顧客との距離の近さと、理解の深さにあります。
ターゲットを絞ると、本当に顧客は減るのか
もちろん、ターゲットを明確にすれば、「自分には関係ない」と感じる人も出てきます。しかし、それは必ずしも悪いことではありません。
事業にとって重要なのは、できるだけ多くの人に興味を持ってもらうことではなく、
自分の価値を本当に必要としている人に選ばれることだからです。
100人に何となく興味を持ってもらうことと、10人に、「これは自分に必要なサービスだ」と思ってもらうこと。小さな事業では、後者の方が意味を持つことがあります。
ターゲットを絞ることで減るのは、必ずしも「顧客」ではありません。
むしろ、
自分の事業との相性が低い人への曖昧な発信が減っていく。
私は、そう考えています。
「誰に届けるか」は、事業の本質につながっている
ここまでターゲットについて考えてきましたが、「誰に届けるのか」は、単なるマーケティングの設定ではありません。
- なぜ、その人を支援したいのか
- その人のどんな問題を解決したいのか
- その人にどんな価値を届けられるのか
- なぜ自分だから、それができるのか
これらを考えていくと、ターゲットの話は、
事業そのものの話につながっていきます。
前の記事でお伝えしたように、
事業の本質とは、顧客、提供価値、強み、目指す方向を一本につなげることです。
「誰に」は、その中心にあります。
「事業の本質とは何か?」については、こちらの記事でも詳しくお伝えしています。
「誰に」を決めるための4つの問い
自分の事業の顧客を考えるときには、次の問いを使ってみてください。
- 自分の価値を最も必要としているのは誰か
単に「買ってくれそうな人」ではなく、自分だからこそ大きな価値を届けられる人を考えます。 - その人は、今どんな状況にいるのか
年齢や職業ではなく、どんな問題を抱え、何に迷っているのか。具体的な状況を考えます。 - その人は、どうなりたいと思っているのか
問題をなくすだけではなく、その先にどんな状態を望んでいるのかを考えます。 - なぜ、自分はその人を支援したいのか
ここは意外と重要です。市場規模や売りやすさだけではなく、自分の経験や想い、専門性と、その顧客との間にどんなつながりがあるのか。
そこまで考えると、「誰に届けるのか」が、単なるターゲット設定ではなくなります。
ターゲットを決めることは、事業の焦点を決めること
ターゲットを絞ることに、不安を感じる必要はありません。それは、顧客を切り捨てることでも、可能性を狭めることでもありません。
自分の事業が、まず誰に対して最も大きな価値を届けるのかを決めること。
そして、その人に届くサービスをつくり、その人に届く言葉で伝えること。それが、ターゲットを明確にする意味です。
小さな事業ほど、「誰にでも」ではなく、
「この人に」
を明確にする。その方が、提供価値も、強みも、メッセージも、ホームページも、より明確になっていきます。
誰に届けるかを決めることは、事業の可能性を狭めることではありません。
事業の焦点を定めることです。
誰に届けるか。その先に戦略がある
Strategic Business Designでは、ターゲットだけを切り離して決めるのではなく、
顧客 → 提供価値 → 強み → ビジョン
をつなげながら、事業の本質を整理します。
そして、その本質をもとに、
誰に対して、どんな価値で、どのように選ばれるのか
を戦略として設計していきます。ホームページも、その戦略を顧客へ届けるための重要な接点です。
事業の本質を、戦略へ
戦略をホームページへ
それが、Strategic Business Designです。

